宮本常一の足跡
〜旅する民俗学者の
遺産〜

10.宮本常一の足跡〜旅する民俗学者の遺産〜
東京の府中市郷土の森博物館で、民俗学者の宮本常一先生の生誕100年を記念した展覧会が開かれています。
http://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/event/event.html

改めて言うまでもなく、日本を代表する民俗学者で、全国各地の農山村から離島まで、これほど隈なく歩き、古老から聞き取り調査や民具収集をした学者は他にいないと言われています。
調査するだけではなく、過疎地の振興に尽力し、多大な功績を残して、1981年に亡くなりましたが、膨大な著作や貴重な写真などに見られる民衆への眼差しは、近年ますます評価が高まっています。

40年ほど前、武蔵野美術大学の学生だった私は、数年前から教授として民俗学を教えていらした宮本先生と出会いました。
講義を受けることは出来ませんでしたが、先生の研究室では若手研究者や学生が集まって「生活文化研究会」が開かれていて、全国各地から民俗調査の依頼に対応していました。
元々日本史は好きでしたし、家具デザインを学んでいましたので、生活で使われた道具に興味を持って、民俗学でいう「民具」を調べてみたいと思い、その研究会の末席に加えてもらったのです。

まず最初は近いところで青梅市内の山間地の調査でしたが、宮本先生の指導の下、農家のお年寄りの聞き取り調査をしたり、蔵の中の「民具」を調べたりして、使われなくなった道具を譲ってもらい、「糸繰り機」などを担いで帰ってきました。その後、岩手県の雫石町のダム水没予定地区の民俗調査を手伝い、夏休みには自主的に本土復帰前の沖縄に1ヶ月(ビザの有効が30日間だった)に滞在して、本島北端の集落や、いまや観光地となった、石垣島、西表島、竹富島などを歩き回りました。
帰りのリュックには、藁製品や木工品などの「民具」を詰め込んでいて、48時間かかって着いた東京港の税関検査で驚かれましたが、それらは今でも武蔵美の資料館に納まっていると思います。

そうして、民俗調査を手伝ううちに「民具」だけではなく、集落の社会構造などにも興味を覚え、能登の珠州市の調査のときには、一ヶ月かかって対象集落の歴史をたどりましたが、最後に宮本先生が来られた時に、集落の配置図を見ただけで、その成り立ちを解明されて、「恐れ入りました」という思い出があります。その後、大学は「全共闘」の時代となって、研究会や民俗調査からは離れてしまいましたが、宮本先生から教えられた「民衆の視点」は、私の生涯の礎になっています。

木の匠たち

9. 木の匠たち
誠文堂新光社から出版された「木の匠たちー信州の木工家25人の工房から」は、西川栄明さんの文に山口祐康さんの写真というコンビで昨年秋に信州を拠点に活躍する木工家25人の工房を訪ねて取材してまとめた本です。

西川さんは北海道在住で、北海道で活躍する木工家たちを取材した「北の木仕事」などの著作があります。北海道の友人、知人の木工家が紹介されている「北の木仕事」を見て、信州にも大勢の木工家がいるので、同じような本ができないかと思っていましたが、いつも「週末工房」を刊行している誠文堂新光社が昨年企画してくれまして、今回実現したものです。

信州には大勢の木工家が在住して制作を続けていて、木工の仕事で食べていけているかは別として、200〜300人はいるのではないでしょうか。

その中から、西川さんたちが作品のオリジナリティを重視し、「その人の持ち味が色濃く発揮されている作家に注目した。」(はじめに、から)、高い技術力とデザインセンスなどで選んだそうですが、25人の中には友人や旧知の木工家も多く、また名前を聞いているだけで面識の無い木工家もいましたので、出版されるのが楽しみでした。

本文には、それぞれの木工家のこだわりのエピソードなどが紹介されていて、オリジナリティの源泉が垣間見られるようで、数多い画像ともども興味深いものがあります。

誠文堂新光社のサイト
http://www.seibundo-net.co.jp/CGI/search/syousai.cgi?mode=id&id=02233&key=sy
oseki


この本に選ばれたのも何かの縁と思う木工家で展覧会を一緒にやってみたいということで、有志で相談して、松本で「木の匠たち」展を開催しました。
展覧会報告へ http://www.tani-ww.com/info_3.html

1100人の会

8. 1100人の会
工業デザイナーの故秋岡芳夫さん(1920~1997)はモノづくりに関わる様々な場を作り、グループを生み出しましたが、そのひとつ「1100人の会」は今から30年程前に始まりました。

「1100人の会」は工芸のモノづくりを活性化するために考えられましたが、「作り手100人、頼み手1000人、顔見知りになって、誂えもの作ろう。誂えもの使おう。」をテーマに作り手と使い手の出会いの会として活動してきました。

私も20年程前から会員になっていますが、「1100人」といっても現在の会員数は150人程度です。しかし、多くの一流の作り手や暮らしの達人など個性的なメンバーが参集していますが、私が若手の方ですから、平均年齢は一寸高めです。
主な活動としては東京で開かれる1月の新年会と6月の総会、10月には地方の工房などを見学する創会があります。

平成18年の新年会は私の友人の木工家、須田賢司さんにゲストでお話してもらうことになりました。
生前の秋岡さんには、「誂えもの」ということで、私の仕事を評価して貰いまして、注文家具の木工家として進むことに力を貸していただきましたが、秋岡さんが、若手木工藝作家として世に出た須田さんの仕事も高く評価していたのを思い出します。

「1100人の会」について、興味のあるかたは、お問い合せ下さい。

秋岡芳夫さんの残した多くの著作もおすすめです。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/%8FH%89%AA%96F%95v/list.html
木工の本も色々ありますが、20年程前の本ですから絶版が多く、古本で捜すことになります。

須田賢司さんの文章が載っているサイトです。
http://uwamuki.com/kinobunka/j/kikou/2004.6.10/suda.html

朝鮮工芸と
浅川巧

7. 朝鮮工芸と浅川巧
浅川巧は山梨県の出身で、大正3年に朝鮮に渡りました。
日本の朝鮮植民地支配の時代に、朝鮮の人々に博愛の精神で接するとともに、朝鮮の陶磁器や木工品など民芸の中に、朝鮮民族文化の美を見い出し、それを日本に紹介しました。
柳宗悦や兄で朝鮮陶磁研究家の浅川伯教と力を合わせて、京城(現在のソウル)に蒐集した民芸品を展示する朝鮮民族美術館を開館して、朝鮮に人達にもその美しさを知らしめたのでした。
展示品の一部は現在の韓国国立中央博物館に引き継がれています。
また朝鮮総督府の営林署に勤務していて、朝鮮の風土に合わせた緑化にも功績を残しました。
昭和6年に40歳で亡くなりましたが、ソウルの共同墓地にあるお墓は、韓国の人々により守られてきました。
浅川巧が日韓の交流に果たした役割は、あまりにも大きいものがあります。

私が朝鮮王朝時代の木工家具に興味を持ったのと同じ25年ほど前から、浅川巧の著作集の復刻に始まり、評伝「朝鮮の土となった日本人」が刊行され、出身地の山梨県に兄弟の資料館も開館しましたので、浅川巧についての理解と関心が広がってきました 。

浅川巧は「朝鮮の膳」と「朝鮮陶磁名考」の著作を残していますが、どちらも朝鮮王朝時代の文化が色濃く残る大正から昭和初期に調査された内容をもとに書かれているので、その分野の唯一の原典となっているものです。

私も復刻された「朝鮮の膳」に紹介されている「彫絵半円草花文盤」を参考に「半月膳」を作ったり、「公故床」を参考にして「酒膳」を作りました。

浅川巧の評伝「朝鮮の土になった日本人」は草風館から出版されています。
http://www.sofukan.co.jp/books/126.html

浅川巧の著作は「浅川巧全集」(草風館)がありますが、岩波文庫から「朝鮮の膳」 などを収録した「朝鮮民芸論集」が出版されているので、入手しやすくなりました。
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-381051-1

また、浅川巧の出身地である山梨県高根町の椙村彩さん(17歳・山梨英和高校在籍)の研究ノートを、揺籃社が「日韓交流のさきがけ―浅川巧」として出版していますが、よくまとめてあり、わかりやすいので、入門書としておすすめです。

浅川巧を描いた小説「白磁の人」を映画化する活動が、出身地の山梨県を中心に広がっていますので、紹介いたします。
http://www2.manabi.pref.yamanashi.jp/center/hakuji/

ブルーノ・タウト

工芸・デザイン展

6. ブルーノ・タウトの工芸・デザイン展
ドイツの著名な建築家ブルーノ・タウト(Bruno Taut1880〜1938)は、「鉄の記念碑」「ガラスの家」など当時としては「新素材」を使った前衛的な作品や、大衆の生活向上を目指した集合住宅の建設で世界的な評価を得ました。

しかし1933年、ナチス政権の弾圧を受け、それを避けて来日しました。来日してから半年の間、桂離宮、伊勢神宮などを見て回った後、仙台の商工省(現経済産業省)工芸指導所嘱託となり、工芸品の製作指導を行いました。

翌年には群馬県で工芸活動の中心を担っていた井上房一郎氏の招きで高崎を訪れ、井上工芸所や群馬工芸所(工業試験場の前身)の嘱託として、伝統素材を生かした木工芸やガラスなどの工芸品の製作指導にあたり、デザインした物品は300点を越えました。
また、「ニッポン」「日本文化私観」などの著作を出版して、日本の美を世界に知らしめました。

しかし当時の日本では建築家としての活動は難しく、現在では住宅が1棟熱海に残っています。1936年、招請を受けてトルコへ移り、1938年、イスタンブールで58歳の生涯を閉じました。

私が最初にタウトのイス等を制作したのは、1988年のことですが、新潟市にできる「天寿園椅子の美術館」のコレクションにタウトがデザインしたイスなどを加えたいという事で、オリジナルの失われているイス3種類とオリジナルを複製する小テーブル1種の制作を依頼されました。高崎時代のタウトの助手をされた水原徳言さんの手元に残されていた図面と水原さんの助言をもとに曲げ木や籐張り、竹皮編みなどを組み合わせて、苦労しながらも無事に完成させました。

復元してみると少し首をひねる箇所等もありましたが、長い歴史を持つヨーロッパのイスづくりのエッセンスが感じられ、とても良い経験ができたと思います。その後「天寿園椅子の美術館」は閉館して、そのコレクションも見ることができなくなり残念です。

タウトが日本に滞在したのはわずか3年6カ月ですが、日本の建築界、デザイン界に与えた影響は大きく、工芸指導所の所員だった剣持勇や豊口克平は戦後日本のデザインをリードしました。この二人を含む日本を代表する家具デザイナ−7人の椅子などを紹介した本「美しい椅子2」には、タウトに関する記述もあり、1988年に私が復元した「籐張りのアームチェア」なども紹介されています。

この本の著者の島崎信さんは武蔵野美術大学名誉教授で、イスの研究家として有名ですが、折々にお世話になってきました。
https://www.ei-shop.jp/ec/script/product/pub.php?code=13800403

注文でつくる
座位保持装置に
なった「いす」

5. 注文でつくる
  - 座位保持装置になった「いす」

矢野陽子著1700円 はる書房TEL03-3293-8549

障害児・者の生活道具づくりを30年近く作り続けてきた、東京・昭島市の「でく工房」のこれまでの活動と現在の課題をまとめた本が出版されました。 本の中では「でく工房」の代表者の竹野廣行さんの交友関係にも触れられていて、私も少し登場します。 80年代からの様々なものづくり中でも、大きな広がりを見せた重要な活動を知ることができる本となっています。 残念ながら竹野廣行さんは2003年9月に亡くなりましたが、この活動は受け継がれて行くことでしょう。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4899840438/503-6411920-9909520

現代アメリカの
木工家具展


4. 現代アメリカの木工家具展
       ボストン美術館

The Maker's Hand:
American Studio Furniture, 1940-1990
The evolution of innovative and artistic furniture design
November 12 , 2003 - February 8 , 2004

東京国立近代美術館工芸館で開催された日本の「現代の木工家具」展は無事に終わりましたが、アメリカのボストン美術館でアメリカの「現代の木工家具展」が開催されました。
1940
- 1990と書いてあるように、木工家具作家としての日本でも有名な第一世代のジョージ・ナカシマやサム・マルーフ、多くの木工家具作家に影響を与えたウエンデル・キャスルやイエムス・クレノフ、更に若い世代の家具作家も含め、46名の木工家具作家の代表作で、現代アメリカの木工家具の世界を回顧しています。 http://www.mfa.org/exhibitions/makers_hand.html
この展覧会に合わせて図録も兼ねて出版された本は日本でも入手可能です。 amazon.co.jpの下記ページをご覧下さい。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0878466622/qid%3D1069164321/250-4333497-1677012
カラー図版も多く、おすすめの本です。

深井美智子の
仕事

3. 深井美智子さんの仕事
編物イスの籠を作ってもらった深井美智子さんの仕事の紹介です。
バスケタリー作家として、あかり、花籠、バックからオブジェまで幅広く、新しい作
品の制作を続けています。
深井さんの仕事の紹介はこちら
http://www.40tokyo.com/face/fukai/

深井美智子さんは第46回「日本クラフト展」で受賞されました。
http://www.craft.or.jp/home/craft2.html

アレクセイと泉

2. 映画「アレクセイと泉」
全国各地で上映会が続いている素晴らしい映画です。チェルノブイリ原発の事故の影響を受けたベラルーシの村の暮らしを映したドキュメンタリーですが、とても美しく、私たちに“本当の豊かさとは何か”を語りかけます。私もモノづくりの原点を考えさせられました。
映画については
http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/sosna/index.html
木工用接着剤
1. 木工用接着剤 1
 私の木の仕事では色々な木工用接着剤を使っていますが、その内アルテコ製のエポキシ接着剤と瞬間接着剤をおすすめします。
 私が使っている製品名はF30Cで、作業ではホゾの組み立てや隙間の充填などに常用していますが、30分硬化タイプなので作業時間も調度よく、容器もポリチューブ入りの2液性なので扱いやすいです。
 瞬間接着剤は木工用で粘度の低いW1と粘度の高いW2を使い分けていますが、仮止めや細かな隙間に木粉と合わせて充填したり毎日のように活躍しています。瞬間といっても1分ぐらいは硬化時間があり、硬化促進剤のエアゾールのプライマーを併用すると作業がしやすくなっています。
 上記の接着剤をまとめて購入したので、数量限定で希望される方にお分けします。
エポキシ接着剤 1kgセット 5500円
瞬間接着剤 W1 W2 各20g入りセット 1400円
スプレープライマー 420ml 1900円
 これは消費税込みの価格ですが、送料は着払いになります。
振込先等、詳しいことはメールでお問い合わせ下さい。
アルテコホームページ
http://www.alteco.co.jp/